「――…テメェッ!」
怒りで煮えたぎる体、体中の血がまるで逆流するような錯覚に陥って。
血が、沸騰したように、熱い。
「――…ッ」
拳に痛みを感じた時、少しは冷静になるものだと。
そう思っていたけど。
美桜の上から乱暴にソイツを剥がし、思いっきり顔をぶん殴った。
緩いカーブを描き、壁に激突する。
まだ、殴り足りなくて。
口の端が切れ、血が滲むソイツの襟元を掴みもう1度殴ろうとした時だった。
「やめて……っ」
悲鳴に似た、美桜の叫び声が怒りで燃えるこの体を一瞬で貫く。
もっとも人間らしい、という
“感情”が抜け落ち、一瞬でも、殺人鬼と化した俺。
重要な部品が欠落し、まるでロボットのような。
そんな俺を静止させるのに、美桜の声は十分だった。