そこで初めて異変を感じ取った。


鍋の底は、ハンバーグとソースが焦げ付いている。

いくら美桜でも、こんな長い間火を付けているなんてことないはずだ。


そばにいれば、火の通りなんて確認できる。

この鍋の様子を見ると、多分……弱火で長時間火にかけていることが見て分かる。

現に、じゃがいもなんて煮込み過ぎてもう半分崩れている。



恋に落ちるような、ジュッと焦げ付く衝動なんてもんじゃない。

火にあぶられているような、ズキズキした衝撃が体を貫いた。




「美桜……っ?」

階段を上っていくと――…




「……んっ、」

何かを我慢するような、美桜の声


でも、俺が“聞いてきた”甘い声じゃない。

ただ、何かを必死に我慢――…




「美桜!」