「志月も行こうよ!また食べ比べしよ?」
「え、遠慮しとくよ……美桜チャン」
いつものように3人でふざけて。
いつもの日常、登校風景。
――ふと、背中に感じた“何か”
柔らかい棘のような、そんなに痛みを伴わない“何か”
冷たい、視線のような……。
「――…ッ!」
ハッと、“あの存在”に気付き、慌てて後ろを振り返る。
ザワザワ……と、嵐の前触れのような波風が心臓から全身へと。
広がっていったんだ。
「未来……?」
「あ?……ああ」
心配そうな視線を送る美桜に、何ともなかったように小走りで追い付く。
「送れちゃうよ」
俺の手を引っ張って、人懐っこい笑顔を見せる美桜に
その存在を、頭から無理やり追い出した。
もう、解決したはず。
なんて、目の前の幸せにいっぱいいっぱいで、俺の考えがどれだけブレていたかを
――後で思い知ることになる。