「じゃあ、今日は頼むよ、未来」
「戸締まりは忘れちゃダメよ、美桜」
今日の夜は、有名なホテルでディナーの予約をしているらしく、出かける予定のふたり。
夜は俺と美桜だけの夕食となる。
「行ってらっしゃい」
ふたりに見送られて、いつものように家を出た。
隣を歩くのは心なしか、機嫌のいいネコ。
「今日の夕ご飯は何にしよう」
肉食の美桜の頭には、肉料理ばかりが浮かんでいるのだろう。
「煮込みハンバーグとかどう?」
俺がそう言うと、真っ黒な瞳を大きくさせながら
「じゃあ一緒に作ろう?」
首を傾けて、俺を覗き込んでくる美桜に心臓がドクン……ッと音を立てた。
今の会話……端から見たら新婚みたいじゃね?
意識すれば、意識する程、鼓動は高鳴っていくばかり。