破られた沈黙の後に続くのは、計り知れない程の重い空気。
「本当は――分かってんじゃないの？」
「……」
黙り込んでしまったその表情からはオヤジが予測していた
“いつか”の日を思い出させる。
いつか、とは……オヤジや俺の母さん、美桜の両親が抱えてきた大きな秘密が明らかになる日。
「いつかは、……話さなければ、と思っていた」
「……」
「私が“誰か”を愛する程に、未来にもいずれ、そういう人に巡り会うと」
――それが、咲良さんの娘じゃなかったら……
この話が、未来の耳に入ることはなかっただろう――永遠に。
オヤジの視線は“俺”を見ているのではなく俺の中に眠る“何か”を探っているようだった。
「結論から言う」
その言葉に、体の奥に眠っている何かが……ドクン、と疼いた。
「母さんは私を愛していなかった」
