次の瞬間には、あの塀の向こう側へと姿を消してしまう。 長い髪を、 夜空をバッグになびかせながら。 「追わなくていいのかよ」 塀を見つめたままの志月。 「……いいよ」 俺も塀を見つめたまま返した。 もし、 “何か”があったのなら。 また、 どこかで逢えるだろう。 俺と彼女を繋ぐ、 唯一のモノは―――… ポケットにしまわれた、まま。