彼女に、名前を告げた。 闇に慣れた俺の瞳は、しっかりと彼女を捕らえたままで。 口元を隠していた髪が、サラリと肩に落ちる。 口端は、つり上がることもなければ下がることもなかった。 ただ、無表情のまま―― 俺を見つめ返すだけ。 その真っ直ぐな視線に縛られ 時間にして、多分……数秒。 でも、 ――俺にはその何倍にも思えた。 「……っ」