「乾杯」
そんな4人の声が重なり、グラスの音がカランと控えめに弾けた。
「桜吹雪?」
「春新作のカクテル。まだ店には出ていないよ」
――咲良さんに、1番に飲んでもらいたかったんだ。
と、肝心なことが言えていないオヤジの隣に座る俺。
その向かいの席には美桜。
バーでのディナーなんて、母さんが生きていた頃以来だ。
美桜なんて、妙にそわそわしていて今日は髪をアップにしている。
不器用なネコは、自分の毛をうまくまとめられずストレスから毛をひっかいてしまう。
「出来ないよぉ……」
鏡の前で鳴く美桜に、なぜかコテとスタイリング剤を持った俺が登場。
――『未来、頼むよ~…』
今日は大事な集まりなんだ。と、俺に泣きついてくる志月。
――『何が、“大事”な集まりだよお前の場合はただの合コンだろ』
――『マジで頼む』
――『今度なんかおごれよ』