あともう少しで、家に着く。
細い路地裏の灰色をした塀に、
美桜の両手を奪うように押し付ける。
「さすがに俺も……妬ける」
――あんまり他の男の名前を呼ばないで?
心の裏側でひっそりと隠れていた独占欲のかたまりが顔を出す。
「ん……っ、あっ……」
「呼んで?俺の名前」
両腕で美桜の手首の自由を奪い、唇で他の男の名前をこぼす美桜の唇を塞ぐ。
「ん、……ふっ、みら…」
あの男……
美桜の兄と同じ感情
“独占欲”が俺の体にも芽生え初めていることに――…
「みらい……」
はぁ、はぁ……と、肩を上下させながら苦しそうに呼ぶ美桜に
自分が今何をしたのか。
そう思うと、ゾッとした。
「ごめん。苦しかっただろ?」
「ううん……」
フルフルと首を振る美桜を、ぎゅうっと抱きしめた。
鼻をくすぐる桜の香りも一緒に。