「――…、うッ」
美桜の手首を強引に掴みながら、駆け上がる階段。
オヤジと、美桜の母親の制止の声は……聞こえない。
ただ後ろから聞こえるのは、美桜の苦しそうな嗚咽だけだった。
――、泣いてる…?
「――……美桜…っ」
部屋に入って後ろを振り返ると、歯を食いしばって、涙を流す美桜の姿。
「う……っ、みら……」
“みらい”
名前を呼ばれる前に、今にも血がにじみ出てきそうなその小さな唇を塞いだ。
「んっ…、やぁ……っ」
もっともっと
壊れてしまえば、いい。
もうどうせ、何をしたって
“元”にはもどれないんだ。