その小さな手を握って走る速さには、限界がある。


速度を緩めるふたりに追いつこうとする、やたらデカい影。


しつこいってモンじゃない。




――アイツは、“本気”だ

本気で
美桜を連れ戻そうとしてる。




華奢な肩を、激しく上下させて

巻いてあげたマフラーからは、苦しそうな息をもらしている。



これ以上は、無理だ。


美桜を抱えて逃げようか

なんて一瞬考えたけど、多分それでも奴には簡単に追いつかれてしまうだろう。



俺の頭は、サラサラと最悪なシナリオを描き始める。