乗り込んだ電車は、思っていた程混んではいなかった。
端っこの席を見つけた美桜は、繋いだ手を引っ張る。
「……ここ」
てっきり端っこに座ると思いきやその席は開けて
隣に空けたスペースをポンポンと手でたたく。
“美桜なりの”
小さな気遣いに甘えたいんだけど……さ。
さっきから気になるのは――
まるで獲物を見るような目で、下から上へと舐めるような視線を送る……
おとこ、男……のち、オッサン。
美桜が座っている席は、ちょうどいいことに
ドアの近くではなく、壁側の席。
「美桜は、こっち」
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