風が吹いて、大事なその紙切れは宙を舞う。
「わ。ちょっと、待って…!!」
慌てて立ち上がった私は、紙を追って走り出す。
木の枝に引っかかってしまったそれを、背が低い私は見上げてため息をついた。
「もう、嫌になっちゃう…」
何度かジャンプして届かなくて、しばらく考えて登ってみようと思った。
足をかけて、ほんの数十センチ登ってちょっとためらう。
周りには誰もいないからいいけど、完全に危ないおねえさんだし。
なんとか手をのばして、紙に手が届きそうな所まできたのに。
支えていた右手が滑って、落ちそうになった。
でも。
私の体は、ふわりと浮いた。
「…危ねぇだろ。木登りなんて、子供か?」
…心臓が、止まるかと思った。