電話を切って麻美を見ると、なぜかすごく驚いた顔をして俺を見ていた。


「麻美?」


俺が呼び掛けると、麻美は我に返ったようだった。


「…誰の話?」

「は?」


「亜矢って誰?脳震盪って…怪我でもしたの!?」


なぜこんなことを聞いてくるのだろうか。


違和感を覚えながら、でも亜矢の事を話す義理はない。


「麻美の知らない奴だし、お前に関係ないだろ?」


麻美はそれきり黙って、しばらく考えた後、

「…先に降りてる」


小さく呟いて、部屋から出て行った。


「なんだよ、麻美の奴…?」