俺はそれほど鈍感じゃないから、
多分、麻美が俺に好意を寄せているんだろう、と気付いてる。
腕を離されて、ムッとした表情を隠さない麻美はまだまだガキだと思いながら、
携帯が震えている事に気付き、慌てて電話に出た。
「雅也?…いや、大丈夫だ。今、家」
雅也からの電話。亜矢の容態を知らせてくれた。
亜矢は軽い脳震盪で、問題ないと聞かされて、心の底から安堵のため息が出た。
「そうか…良かった。目が覚めたら帰れるのか…?…大事を取って一日入院?分かった」
俺が話してる間、麻美は俺の部屋の漫画を手に取って、パラパラとだるそうにめくっていた。
「あぁ、分かった。亜矢を…頼む」
俺が言った言葉に反応したかのように、麻美が漫画を派手に落とす音が部屋に響いた。