もう諦めたのに、まだその事を持ち出す親父に少しイラつきながらも、俺はそれに答える元気はなかった。
全ての事がどうでもよくて、全ての事が煩わしい。
「…放っておいてくれよ」
そう呟いて、俺は俯いた。
「…お前には…いつも我慢させてばかりだな…」
そう言って、親父は遠くを見つめてしばらくの間黙っていた。
亜矢。
俺の世界に色をくれた、たった一人の人。
俺の世界はまた色を失って…
気が遠くなる程の長い時間、いつまでも亜矢を想い続けるんだろうか。
「…悠斗!」
俺を呼んだ、懐かしい声に思わず顔を上げた。
「…母さん…?」