俺が黙ってると、親父は近くのベンチに座りコーヒーを飲んだ。


「…お前があんなに感情的になった姿を見たのは、何年ぶりだったかな」


親父は柔らかい表情で目線を俺に向けた。


「そんなにこっちに残りたい理由は、教えてくれないのか?」


俺は親父の隣に腰を下ろし、だるそうに答えた。


「…ただ、生まれ育ったここから離れるのが嫌だっただけ」


「…相変わらずだな。悠斗は。嘘ばっかりつく。…いや、そうさせてるのは俺のせいか」


親父はゆっくりとコーヒーを飲みながら、またため息をつく。


「…どうして、母さんの所に行かなかった?そうすればここにいられたのに」