こんな状態で講義に身が入るわけがない
講義終了のチャイムと同時に講義室を後にする
国際学部の正面玄関を出て、正門へと急ぐ
早く帰らなきゃ、どこでなっつに遭遇するか分かったもんじゃない
ちょうど正門を通り過ぎようとした時だった

「鈴香っ!」
まるで金縛りにあったかのようにぴたりと体の動きが止まる
声のした後ろを振り向くことが出来ない
つい2、3日前まで1番聞きたかった声
でも今は、1番聞きたくない声
「話したい。今、時間平気?」
嫌だ…聞きたくない
「ごめん…迷惑、だったよね?彼女さんにも謝っといて。それじゃ…」

まともになっつの顔が見れない
一刻も早くこの場から離れたかった
早く、早く
じゃないとなっつの前で泣いちゃうから
これ以上迷惑かけたくない