名雪は体育館の外に屈み込み、忍者のように急いで横に移動して、中腰で体育館の下の小窓からひょっこり顔だけ覗かせた。



「ねぇ、名雪。体育館の中の2階
 から見たほうが見やすいよ?」



あたしはポケットに手を突っ込み、普通に歩いて名雪の後ろを着いて行った。



「バカァ!さっちゃん!
   ばれるじゃない!
 しゃがんでしゃがんで!
 ここからこっそり見るのぉ!」

名雪に制服の裾を引っ張られ、無理矢理座らせられた。



「まるでストーカーだわ」



体育館では男子バスケ部が練習していた。



「はぁぁ、カッコイイ」
窓を覗きながら、名雪がため息混じりに言った。



恋する乙女に、あたしの皮肉は聞こえないみたいだ・・・



「名雪ちゃーん。目が
 ハートの形になってるよー」



名雪は松本の熱戦ぶりを、あたしは名雪の熱中ぶりを見守った。



――ピピーッ!

「一旦、休憩!」

しばらくすると、練習が途中休憩となった。



「名雪、あたしバイト行か
 ないと。まだ見て帰る?」



「ううん、
 さっちゃんと一緒に帰るぅ♪」



体育館の前を通って帰ろうとした時、ちょうどバスケ部の男子が休憩にでてきた。


『あっちぃなぁ!』

『体育館は蒸し風呂だよな!』



知らん顔をして通りすぎた時、誰かが後ろから私の名前を呼んだ。

「あっ、吉岡じゃん!」



「・・・ん?」
あたしはとっさに振り向いた。


「さっさっさっ、さっちゃん!」

名雪が、顔を真っ赤にして体を硬直させてる。