「おいっ!紗茅!
 大丈・・・ぶっ!」




那抖が片手で自分の両目をふさぎながら、めくれあがったあたしのスカートを直す。



「見てませーん!
 見てませーん!」




「みーたーなー!」




「久々にいいもん
 見させてもらいました♪」




那抖が『パンパンッ』と柏手を打つ。




「ゴラァー!」




「あっ膝から血が出てんぞ!」




「ひゃー!」




「ほら、唾塗っとけ」




那抖は指を舌でペロッと舐めてあたしの膝につけた。




「きーたーなーいー!」




「もうおまえ危ないっ!
 後ろっ!」




「はーい♪」




唇を尖らせて、ちょっとにやけながら自転車の後ろへ乗った。




那抖がすいすいと自転車のペダルを漕ぎ出した。




あたしは雑踏の騒音に掻き消されないようにおっきな声で言った。




「ねぇ、あたし
 自転車だ〜いすきぃー♪」




「そっかぁ?」




「うんっ♪」




『自転車』と『那抖』の言葉を重ね合わせた。




ほんとはね。




後ろに乗って那抖の背中にしがみつきたかったの。




那抖の背中はあったかいから・・・




このまま時間が止まればいいのに・・・

そう思った。




「あっ見て星きれー♪」




「だなーっ♪」



なんだか星のかけらが落ちてきそうで、そっと夜空に手を伸ばした。