「あ〜あ、
 明日から学校行かなくていいと
 思うと、うれしいような
    悲しいような・・・」




――ズズズズズーッ!




名雪がストローでオレンジュースを飲み干し、うらめしそうな顔をしている。




「だから喧嘩しないでって
      言ったのにぃ・・・」




「駄目。あたし、カッとなると
 何も見えなくなる・・・
 恋愛にもそうなんだなぁ・・・」




「えっ?さっちゃん
 好きな人がいるの?」




一瞬、那抖の顔が浮かんだ・・・

けど、すぐに打ち消した。




「ない、ない、ない、ない!」




「ん?なにぃ?」




「いなーいー!
 名雪はいるの?好きな人」




「名雪はぁ
 さっちゃんに恋してる〜♪」




「はい、はい」




「エヘヘ、
 言っちゃおっかなぁ♪」




「誰ぇ?うちの学校?」




「A組の松本君っ♪」




「そうなんだぁ。
 ん・・・?松本?
 あのバスケやってる松本?」




「うん♪
 さっちゃん知ってるの?」



名雪が身を乗り出してきた。




「名雪顔近いってば!
 バスケ部だったからね。
 話したことないけど、
 試合はしたことあるよ」




「きゃっー、紗茅ぃ!」

いきなり名雪が抱き着いてきた。




「名雪ねっ、毎日放課後に
 練習見に行ってるのねっ。
 そっれがぁ、
 めっちゃカッコイイのぉ〜!」




「あぁ、
 スポーツやってるとみんな
   かっこよく見えるよね」



「・・・・・・」



「いやっ、あのっ
 『松本は』カッコイイよ。
       背も高いしね!」




「でしょぉっ?
 名雪の王子様なのぉっ♪」



「王子様ねぇ・・・」




覚えてることと言ったら、バスケの試合中に汗臭かったことしか覚えてないけど。