4時限目が終わってから、名雪が来ないなぁと思っていたその時、慌てて教室に入って来た、C組の子があたしの腕を引っ張った。




「吉岡さん!
 早く来てっ!隣りの教室で!」




「なんなの・・・?」




「いいから早くっ!
  長谷川さんが!」




「名雪がっ!?」




あたしは急いでC組に向かった。




C組では、沢山の野次馬の隙間から高槻が面白がって、嫌がる名雪の髪の毛をつかみ引っ張っているのが見えた。




「痛い!やめてよぉ!」




「あらあら、
 お嬢様ごめんなさ〜い♪
 ママに叱られちゃうわねぇ♪」




「見てよ〜!この弁当。
 幼稚園児かっつーの!
     ―――ハハハハッ!」




――バシッ!




高槻の仲間の一人が、名雪の作った二つの弁当を床に投げ付けた。




弁当の中身は見事に散らばった。




「やめて〜っ!やめてよっ!」




「おらおら〜っ!」


   「どうすんだよ〜!っ」




高槻が名雪の服をつかみ手を挙げた。


  「いやぁ――っ!」





――『ドガッ!』




なんとか野次馬の中を通り抜け、あたしの蹴りが入って倒れたのは高槻だった。




「あんた。
 名雪にっ・・・何をっ・・・」




こぶしを握りしめ、怒りで体中が震え、もう何も聞こえなかった。




その辺にある机、椅子、高槻達に目がけてぶん投げた。




あれだけ甘い砂糖に群がる蟻のように集まってた群れが一斉に散らばった。




名雪が虐められるのをへらへらと笑って見ていた男子が叫ぶ。




「こいつマジギレしやがった!」


     「こぇえ!」



「ハァ、ハァ、ハァ・・・」




気付いた時は、もう高槻は動かなかった。