まだあたしが幼い頃、パパはお酒を飲んでは暴れていた。



「おーい!酒!
    ―――酒がないぞー!」




「はいはい、もう飲み過ぎ
 じゃないんですか?そろそろ
   やめておいたほうが・・・」



「なんだと?
  ―――俺にはむかうのか!」




いつもより酔っていたパパは、木刀を持ってママを執拗に追いかけた。




「やめて!パパやめてっ!」




その日は、あたしが泣き叫んで頼んでも、やめてくれなかった。




あの日、ママのふとももについていた青アザは、今でも目に焼き付いている。




パパは良心が痛んだのか家を出て行った。




お酒さえ飲まなければ、優しいパパだった。





――「今日から二人きりだけど、力合わせてがんばっていきましょうね」




ママは昼は保険会社、夜は水商売で働いた。




ある晩、いつもよりママが遅くに帰って来た。




「ママありえないって!お店か
 ら歩いて帰って来るなんて!
   何kmあると思ってんの?」




「3、4kmぐらい?
 もっとあるかしらねぇ・・・」




「きつくなかったの?」




「ほろ酔い気分で気持ちよかった
 もの。交通費は浮くし、
   チップはもらえるし・・・」




「もう、やめてよ!
 ・・・危ないってば!」




「大丈夫よ〜♪」




親はうるさいぐらい子供の心配はするくせに、子供が心配しても耳に入らないのはどうしてなんだろう。