「何真っ赤になってんの?
 なちゅちゃんカワイーイー!」

あたしはヒョイッとアニキの顔を覗き込んだ。



「うるへぇ〜!
 かわいくなんかないやいっ!」




「またナデナデしてあげるからね
 ぇ、なちゅちゃんっ♪」



「あっ、は〜い♪」




「なんでそこだけ即答なのっ!」




「てかなぁおまえ・・・那抖って
 呼べって言っただろ?」




「え〜呼び捨て?なんだかさぁ、
    一応年上だしさぁ・・・」




「呼んでみ?
 ほら、なぁーつ♪って!」




「えーなんでよ」




「昔からの夢〜♪
 俺呼び捨てされたいんだ!」




「あっそ。
 はーい、なぁぁぁつっ♪」




「キャッ!」
恥ずかしがったフリして両手で顔を隠した。




「アハハ、
 もうバカなんだから!」




楽しい会話をしながらあっという間に家の前に着いた。





「うち、ここ。コンビニでもらっ
 たお弁当持って帰らない?」




「あっいい、いい!
 俺には『美味しいご飯』
 が待ってるからな♪
 今度食べに来いよ!
     ―――じゃあなー!」




那抖はあたしの返事も聞かず、呆然とするあたしを置いて帰って行った。





「美味しいご飯・・・?」





なんだ・・・

大事な人がいるんじゃない。





その夜は少しでも好意を持った自分に後悔して、泣きながら二つのお弁当を平らげた。