今、ママはこの家にいない。



一週間ぐらい前から入院している。



自分の親が癌になるなんて思ってもいなかった。





一週間前、随分前から体調が優れないママを、あたしは無理矢理検査に連れて行った。



「吉岡さん、胃癌ですね。
 この写真見てもらえます?
 黒い部分が癌です。
 かなりの転移が・・・
 早く検査したほうがって何回も
 申しましたよね?」



「・・・・・・」



「どーしますか?
 吉岡さん。明日にでもすぐ入院
 されたほうが・・・」

高飛車な女医が足を組みながらそう言った。



頭が混乱して、何がなんだかわかんなかった。



本人を目の前にして、いきなりの告知・・・



病院の配慮の無さに、驚き、憤慨した。



とにかく、病院の待合室のソファーに座り、落ち着こうとした。





「・・・ママ?大丈夫?」



「うん、大丈夫よ・・・

 まさかねぇ、癌とはねぇ・・・」



無理して平静を装って、笑っているのがあたしにはわかって、それがよけい辛かった。



「だから煙草は
 やめなって言ったじゃん!」



こうなる前に煙草をやめさせるべきだったと、自分に対する苛立たしさをママにぶつけた。



「そーね・・・ごめんね紗茅・・・
 また迷惑かけるわね」


「何言ってんだか・・・」



顔をそらして、唇を噛み締め、泣きそうなのを必死で我慢した。





ママ。死なないよね・・・



ママ。強いもんね・・・





次の日の朝、ママは入院した。