「さっちゃんって強いねぇ」


「強いのかなぁ・・・
守衛のおじさんとは喧嘩したけど」


「え?じゅえいのおじざん?
 ・・・・・・何ぞれ――ズズッ!」


「あーあー、ほらっティッシュ!鼻かみなっ!」


「う゛んっ!じゅえいとげんがじだの?」


『ブビーッ!ズズー!』
名雪が勢いよく鼻をかんだ。



「ハハハ!名雪って天然?
うん、なんかね、面会時間を過ぎたら病院の中に入らせないとか言われてね。
でもバイトしてるから時間外しか無理だしって説明しても通してくんないの。
だから・・・」


「だがら?」


「『あっこ』蹴って病室までダッシュしたった!」


『ブーッ!』

「あ゛〜ばな゛み゛ずがっ!ばな
 み゛ずがだれ゛る゛ー!」


「あーあーあー!」


「ざっぢゃんがっごいー!
ぞれ゛がら゛?」


「帰る時見つからないように、しゃがんでソーッと四つん這いで帰ろうとしたのね」


「う゛ん、う゛ん」

テイッシュで鼻をホジホジしながら名雪がうなづく。

「気付いたら、目の前に仁王立ちされてた」


「うーけーるー!」

手足をバタつかせて名雪が笑った。


「でさぁ、それから事務所に座ってお互い語ったさぁ」


「おじさんは仕事でやってんだよって言うのね。
でも、ママのこと話したらおじさん泣き出しちゃってさぁ」


「うん」


「んで、時間外オッケーってなった訳。内緒でね」