今日のバイトも無事に終わり、店の表には那抖がバイクに乗って迎えにやって来ていた。




「お疲れ様〜♪」


「お〜!お疲れ♪
 ほらっこれ、紗茅専用♪」


「ピンクのメット!
 買って来てくれたの?」

「うん、フルフェイスは顔 こんなんなるし、嫌だろ?」


那抖があたしのほっぺを両手で、押し潰した。


「ぼう、いだいっでばぁ」

「ハハハ♪」



那抖は、いつもにもましてうれしそうな顔をしてた。


「那抖、ありがとう♪」



あたしはピンクのヘルメットを被り、那抖の後ろにとりあえず座った。




「何やってんだ?
 しっかりつかまれ」


「あ、うん・・・・・・」




あたしは、那抖の服をちょっとだけ掴んだ。




「そんなんじゃ、落ちるって!
 ちゃんと前で手を組んで」




那抖が自転車で二人乗りした時のように、ぐっとあたしの手を引っ張り、腰に手を回させた。




雅人で馴れてるはずなのに妙にドキドキする。




「いっかぁ・・・?
 ゆっくり走るからな」


「うんっ♪」


――ゴツッ!


返事をしてうなづいたら、あたしのメットが那抖のメットにぶつかった。



「はいよっ、了解♪」




――ブルンッブルンッ!




那抖と密着するのは久しぶりだ。




エンジン音と共に鼓動が高鳴る。




通り過ぎて行く夜風が心地いい。




那抖は遠回りしてくれたけど、どこを走ったのかも覚えてない。




ねぇ、那抖。



あたしは、ただ那抖とくっついていられるだけでうれしかったよ。




まるで、二人だけで夜空を飛んでるみたいで幸せだったんだ。