「紗茅、大丈夫か?」

那抖はいまさっきまでの怖い顔はなく、優しい顔で言ってくれた。



「あたしは無傷だけど・・・・・・」

雅人達を見た。



「みんな、すまなかったな」


「いや、だいじょぶっすよ」

雅人が切れた唇の血を拭いながら、なんとか立ち上がろうとした。



「ほんとにだいじょぶなの?」

あたしは、雅人の体を支えるのに手を貸そうとした。



「いいから。行けっ!」

手を振り払い、那抖の方に背中を押された。



「ありがと・・・雅人・・・」

あたしは、雅人にハンカチを差し出した。



「あぁ、さんきゅっ。
 気をつけて帰れ・・・」

雅人は壁にもたれながらそう言った。



他の三人もティッシュで顔を拭こうとしたけど、「もう痛いから触るな」と言われ、何度もお礼を言ってから那抖とその場を離れた。