日曜日、あたしは言い過ぎたことを謝ろうと、那抖の家に行くことにした。




玄関の前まで来て、チャイムを鳴らそうか、ノックしようか電話で呼び出そうか迷った。




「ごめんくだ・・・・・・
 あれ?バイクがない!」

「おや、さっちゃんかい。
 遠慮せんとお上がんなさいよ」




おばあちゃんがドアを開けると、スーッと涼しい風が家の中から外へ通り抜けた。



「おばあちゃん!那抖は?
 バイクがない!」


「あら、ほんと。
 どこに行ったのかねぇ。
 あの子大丈夫なのかねぇ・・・」



あたしは、那抖を捜しに走って大通りに出た。


那抖。

バイクに乗って、どこ行っちゃったのよ!




――ブルンッブルンッ!



バイクの音だ!


あたしはとっさに電柱の看板の陰に隠れた。




「ハァハァ・・・・・・」




ヘルメットを取り、汗びっしょりで那抖が道路の脇にしゃがみこんだ。


小刻みに震えていた。




「那抖・・・辛そう・・・・・・」




でも、ここで甘い言葉をかければまた同じことだ・・・




那抖が別にバイクに乗れなくても、あたしにとってなんてことない。




今までとあたしの気持ちは何も変わらない。




ただ克服してほしいだけ。



バイクが好きで。

毎日、毎日磨いて・・・・・・



永遠に乗れないのはかわいそすぎる。




那抖・・・がんばって・・・・・・


あたし、信じて待ってるから。

ずっとずっと、待ってるから。




それから、何度も道路を往復する那抖を建物の陰で見守った。




暗くなってやっと那抖は帰ったようだった。



「あたしも帰ろ・・・」


なんだか行きとは違う重いペダルをこぎながら家に戻った。




また那抖としばらく会えなくなるなんて。



思ってもみなかったことだったから。