那抖の元カノだった人は、香織さんと言う名前だった。


あたし達は、命日に香織さんのお墓参りに行くことにした。



那抖は、お墓の輪挿しにそっと白い花を挿す。



あたし達は、二人並んで手を合わせた。



「那抖君・・・?」

振り返ると、上品そうな女性が後ろに立っていた。



「あ、どうも・・・
 ご無沙汰してます」

那抖は深々と頭を下げた。


「何しに来た・・・帰れ!こんな
 ・・・こんな花なんぞ
     持ってくんな!」

香織さんの父親らしき人が、那抖が持って来た花を抜き投げた。



「お父さん!
 やめてちょうだい!」



「なんだ、その女は・・・早速新
 しい女を連れておでましか?」



「すみません。
 俺そんなつもりじゃ・・・」


「二度と顔を見せるなと
 言ったはずだ!帰れ!」

「すみませんっ!」


那抖が頭を下げ、香織さんの御両親の横を走って行った。