「俺な。元カノと別れて、
　あいつが好きな奴んとこに
　　送ってくとこだったんだ」


「･･････え？」


「あいつ･･･元カノは
　好きな人できたからって･･･
　で、そいつんとこに連れてく
　とこだった。でも、ちゃんと
　　　送り届けられなかった」



那抖が泣くのを我慢して唇を噛んだ。



「そうだったんだ･･････」

「なんか俺、
　ちゃんと付き合えなかった上に
　　　あいつ殺しちゃったよ」

那抖は悔しそうに涙をぽろぽろと流した。



「那抖、殺したなんて言わ
　ないでよ！事故じゃない！」


「だけど、だけどなぁ･･････」


「そんなに泣かないで･･･
　　　　　　　　　那抖」



那抖がこんな気持ちでいたのに、あたしは簡単に死のうとしてた。




自分のバカさ加減に情けなくなった。




「那抖ごめん、ごめんね。
　あたしはどこにも行かない。
　　　　　　　いかないから！」




那抖の震える体をギュッと抱きしめた。




ねぇ、那抖。


あたしはここにいるよ。


ずっとここにいるから。





時に過去は悲鳴をあげて人を苦しめる。




気付かないふりをしたって、振り返れば必ずある。




何かを失い、また何かを掴みながら人は生きて行く。