雅人には報告をしておく義務があると思った。



あたしは、雅人をいつもの喫茶店に誘った。



「よかったな」

雅人は、クリームソーダのアイスをスプーンでつっつきながら言った。



「ほんとにそう思ってる?」



「思ってね〜よっ!
 またもや撃ち〜ん!」



「もう・・・」



「あーあ。今から
 ナンパでもしてくっかなぁ」



「中学生はダメだよ?」



「あぁ。ロリコンじゃねーし」



「それから。煙草はやめなさい」



「おまえ、
 やっぱ母ちゃんみたいだなー」



「えー?」



「父ちゃんが言ってた。
 紗茅見てびっくりしたって。
 母ちゃんの若い時に
      そっくりだって」



「あぁ・・・それであの時?」


「男ってやっぱ母親の面影追うの
 かなって親父が言ってたよ」



「そっかぁ・・・」




「しかし・・・

 一発やっときゃよかったな!」



「雅人っ!!」



「何かあったら電話してこい。
    いつでも行ってやる」



「ありがとう。雅人・・・」




喫茶店を出て

「じゃーな!」
って言う雅人に


「じゃーね」
って手を振りながら答えた。



あたしは雅人の背中を見送りながら、これでもう会うことはないんだと見えなくなるまで手をずっと振り続けた。


ありがとう。

雅人。





雅人は一度も振り返らなかった。