あたしは雅人に連れられて、近くにあったデパートに入りベンチに座った。




「おまえ、
 全然楽しそうじゃないな」




「え?
 そんなことないよ!ほらっ!」





あたしは立ち上がり、スキップして見せた。




「無理すんなって・・・」

雅人は、いきなりあたしの体を抱きしめた。




「無理なんかしてないよ・・・
       なんでよ・・・?」




顔を上げると、雅人の顔が迫ってきた。




「きゃっ!」

あたしはとっさに顔を背けた。




「ほらな・・・」




「・・・・・・」




「おまえ・・・
 今、誰の顔が浮かんだ?」



「誰も・・・」




「嘘つくな!」

雅人が本気で怒鳴った。




「雅人・・・ごめん。あたし
 雅人が好きだよ。なのに・・・」




「泣くなって・・・」

雅人は、ぎゅっとあたしを抱きしめた。




「おまえが幸せじゃないと、
 何も意味がないぞ。
 おまえが泣いてたら
   俺には何の意味もない」




「雅人・・・うっあぁ・・・!」



あたしは


泣いて


泣いて





泣いた。







これでもかってぐらい


泣いた。




あたしは、雅人がこんなに好きなのに・・・








那抖が忘れられない。