「おーい!
 何ぼぉーっとしてんだ?」



雅人の部屋で隣に座りながら、雅人が話しかけても気付かなかった。



「あぁ・・・うん・・・何もぉ・・・」



「夏バテか?」

雅人が、あたしのおでこに手をやった。



「そうかもぉ・・・」



「熱はないな。
 最近、暑い中遊びすぎたな。
 おまえ暑さに弱いのにな・・・
      悪かったな・・・」



「大丈夫だよぉ・・・
 雅人のせいじゃないよぉ」



いくら那抖のことが勘違いだったろうが、雅人と「はい、さようなら」なんて別れる訳にはいかない。



何よりあたしは、雅人が大好きだし・・・・・・



「9月になったら
 自動車学校通って普通免許
 取ろうと思ってんだよなぁ。
 免許取ったら1番に助手席
   乗せてやるからな!」



「2番がいる訳?」



「まーた、こいつ・・・
 ひねくれたこと言いやがって。
 助手席は紗茅専用だって♪」



雅人は、あたしにめちゃくちゃ優しい。



雅人と出会う前の記憶を、全て消したくなる。




「雅人・・・」

あたしは雅人にもたれかかった。



「ん?どした?ぎゅーっか?」



「うん・・・」



「紗茅。体、無理すんなよ・・・
 そのうち俺が稼いで・・・    幸せにしてやるから」



「雅人ぉ・・・」

あたしは、溢れる涙を止めようがなかった。



「泣くなよ〜。その変わり、
 うちのクソジジイが
 もれなくついてくっぞー!」



そんな約束された幸せが待ってると言うのに・・・



あたしは、那抖のことを考えていた。



どうして・・・
あんなことを言ったのか。


何か理由が?