空は厚い雲に覆われていた。



行き交う車のヘッドライトが、何度もあたしの顔を照らす。



雨粒が顔に、ポツリポツリと顔にあたった。




あたしは、いつの間にか学校まで歩いていた。




ここが一番なのかもね。


高槻も喜ぶだろうしね。




あたしはプライドさえも無くしていた。




入り口の事務室には誰もいなかった。



「物騒だな」
そう言いながらゆっくりと階段を上った。




――♪〜♪〜

携帯の着信音が鳴り響いた。



《さっちゃん!どこにいるの?
 心配で戻ったらいないから!
 ねぇっ!聞いてる?》




あたしは何も言わずに携帯を切った。




――♪〜♪〜

「しつこいな」




今度は那抖からだった。




《紗茅!聞いてるか!紗茅!》




「邪魔しないでよ」
そう一言言って切った。




屋上に昇ると、オレンジのボールが転がっていた。




あたしは名雪とのここでの毎日を思い出した。




名雪、あんたが思うほど私は強くなかったよ。




あんたはもう一人でも大丈夫。

ママと仲良くするんだよ。



オレンジのボールを握りしめ、ジャンバーのポケットにしまった。




――♪〜♪〜♪〜

携帯が鳴り続けた。




――さよなら・・・




その場に携帯をそっと置いた。