悲しみを感じる暇もなく、葬儀の準備となった。




葬儀には、名雪のママやお兄さんも来てくれた。




「さっちゃん、
 大変だったわね」




名雪は泣いて、言葉にはならない様子だった。




「ありがとうございます」




那抖や、那抖のパパが葬儀に関して手伝ってくれた。




だけど時間も近くなると、親戚のおじさんとおばさんがどこから聞き付けたのか突然現れた。




「もうおばさんが来たからには
 大丈夫よ。まぁ、まぁ、
 すみませんねぇ、
 色々とお世話になりまして」




那抖のパパが喪主となっていたけど、急遽親戚のおじさんの名前に変更された。



花も増やされた。




あたしはただじっと座っていた。




眠っているママの体の細さが痛々しい。




ママがんばったね。



ごめんね。嘘ついてて。



ごめんね。親孝行なこと何もしてあげられなかった。


色んな想いが込み上げてきた。





ママが好きだった衣裳と、煙草を入れ、花を沢山飾ってあげた。




ママ?

天国ではパパと仲良くしてね。




パパ?

ママをよろしくね。



あたしのこと、ここまで育ててくれてありがとう。




棺桶に釘が刺される。




そのまま車に乗せられ、放心状態のまま窓の外を見ていた。




みんながあたしを可哀相な目で見ていた。



あたしは可哀相なんかじゃないよ。



そんな目で見ないで。





「あ・・・」




真っ白な雪がちらちらと降り出した。




なんだかママが降らせているような気がした。




ママが泣いてるようにも、ママが最後にと見せてくれてるようにも思えた。




今まで見たこともない、桜の花びらのような美しい雪だった。