その日は気持ちのいい晴れた日曜日だった。




2階の窓を少しだけ開け、冷たい風を通した。




気分転換に、なんとなく一人で出かけたくなったあたしは、着替えをして髪をとかしながらどこに行こうか考えていた。



――チリリリリン・・・


「ん?・・・・・・ママ?」




まさかね。




ママがずっと鍵につけている鈴の音が聞こえたけど、空耳だと思い流した。




「ふぅー。なんか体だるいな」




ベッドに寝転がり、いつのまにかうたた寝をしてしまった。





――♪〜♪〜


携帯の着信音が鳴り、目を覚ました。




あたしは寝ぼけながら携帯を開いた。




「もしもし?」




「あっ吉岡さんの娘さんですか?
 お母様が危険な状態なので
    早くいらして下さい!」




「ママがっ?すぐ行きます!」




あたしは急いでタクシーを呼び病院へと向かった。




あたしはタクシーの中、震える手で那抖に電話をした。




「お〜紗茅〜!どしたぁ?」




「那抖!ママがっ・・・
 ママが、もう危ないって!
       ううっ・・・」

あたしは口を押さえ、泣き声が漏れないようにした。




「紗茅っ!落ち着け!
 すぐ俺も病院行くから!」




この日が来るのが一番怖かった。




鼓動が早くなり、呼吸が苦しくなった。




「ママ・・・まだ逝かないで」




この何ヶ月もの間、ずっとあたしを苦しめていた絶望感がまたしても押し寄せてきた。