「風岡さんは、
 何の仕事をしてるんですか?」



「あ?鳶だけど?」



「あぁ、そうなんだ!
  そっかぁ、鳶かぁ」



「なんだよ・・・・・・」



「いや、別に・・・
 ただ一生それじゃあねぇ・・・
 吉岡が苦労するでしょ」


――ガシッ!

「キャー!」

その声に振り向くと松本が倒れていた。


「那抖!!」



「コノヤロー!人の仕事
  ナメてんじゃねーぞ!」

今まで見たこともない怖い顔をして、那抖が松本を見下ろしていた。


「俺、何も!」
切れた唇の血を拭いながらあたしから目を逸らした。


「那抖は意味なく人を
 殴ったりしないよ・・・
 つーか、聞こえてたし・・・」


「クソッ!
 どこがいいんだよ、こんな奴!
 俺は、
 ずっとおまえ見てきたんだぞ!
 なのにいきなり
      こんな奴にっ・・・」


「は?ちょっと待ってよ。
    何言ってんの?」


「さっちゃん。松本君は
 さっちゃんのことが
 ・・・・・・好きだったんだよ」

振り向くと名雪が悲しそうな顔をしていた。


「はぁ?」


「さっちゃん・・・
 気付かなかった?
 松本君がさっちゃんを見る
      優しい目・・・・・・」



「何・・・?何言ってんの?」
あたしは、座り込んでいる松本のほうを見た。



「俺って格好悪いな。吉岡に
 名雪ちゃんのこと言われた時は
 どうしようかと悩んだよ。
 でも、おまえと
   近づけるんならって・・・」


「はぁ?何言ってんのよ!」


「紗茅。名雪大丈夫だよ?
 気付いてたの。
 ずっと松本君見てたもん。
 でも紗茅のこと好きなのは
 変えられない。そうでしょ?」

名雪の言葉は耳に入らなかった。


「汚いよ。やり方が・・・
 そういうの大っ嫌い!名雪の
   気持ち考えたことある?」



あたしは何も気付かず、告ればいいなんて名雪に軽々しく言ってしまったことに申し訳なく思った。


なんだかその場にいたたまれなくなって、人込みの中を掻き分けて神社の外に走った。