自転車を走らせると、通り過ぎる冷たい風で、耳がちぎれそうになる。



「うぅーさむーいっ!
 ねぇ那抖の家初めてだねー!」



「あーそうだなぁっ♪
    ふふふ〜ん♪」



那抖は、パパが帰って来るのが凄くうれしそうで鼻歌を歌っていた。




どんな家なのか、ワクワクするなぁ♪




沢山の家が立ち並び、狭い路地へ入って行った。



「ん、ここって・・・」




――キキーッ!

「到着〜♪」




「どこぉ?」



「こーこっ!」



「ここ・・・?」



「ん?どうかしたか?行くぞ♪」




那抖はあたしにおかまいなしに、玄関のドアを開け奥に入って行った。

「ただいま〜♪」





あたしは、ゆっくりと玄関の中に入って行った。


「紗茅、どうしたぁ?
 遠慮しないで入って来いよ!」

奥から顔を覗かせて那抖が叫んだ。



「うん、お邪魔しま〜す」

間違いない。



あのおばあちゃんちだ。



玄関の猫の置物でわかった。




そこは、コンビニのバイトに行く途中、荷物を運んであげた、あのおばあちゃんちだった。