「母さん!どういうことだよ!
   ―――名雪がどうして!」




病院には外科医である、名雪のお兄さんがいた。




「春彦・・・
 これが初めてじゃないの・・・」




「どうして黙ってたんだよ!
   ―――理由はなんだよ!」




あたしは気付いていた。




名雪の小さな手首のためらい傷・・・




    ――リスカ――




あたしは深い愛情を持つ名雪に、那抖のことを告げることをずっと悩んでいた。




名雪が孤独感を感じるんじゃないかと・・・




「ごめんなさい。
 あたしが悪いんです」




「違うわ。紗茅さん。
  ・・・私がいけないのよ」




名雪が目を覚ました。




「ママ・・・さっちゃん・・・
 お兄ちゃんも・・・沢山いるね。
 名雪のこと心配してきてくれた
 の?嬉しいなぁ・・・・・・」



弱々しい声でそう言うと名雪が微笑んだ。




「名雪のばか!
 今度こんなことしたら
      ―――許さないっ!
  許さないんだからね!
      ―――うわぁぁ!」




ずっと張り詰めていた緊張感が解け、名雪が寝ているベッドに泣き崩れてしまった。