体を離して、佐和の顔を覗き込む。


佐和は何故か顔を真っ赤にして唇を震わせていた。


「……か、噛まないよ。あの時は……突然だったから」


「それ、どういう意味?」


「だから、それは……」


「ハッキリ言えよ」


俺の気持ちは佐和にある。


じゃあ、佐和の気持ちは……?


「あたし……小林が大っ嫌いだった。ガリ勉で暗くて、友達もいなくていつも頭ボサボサで気持ち悪いメガネかけた小林が……」


「あぁ」


そんなの前から知ってる。


自分でもあの姿は気持ち悪い。


「でも今は……小林のことが……――」


「ストップ」


その後に続きそうな言葉になんとなく予想が付いて。


俺は佐和の唇に人差し指を当てて、それを制止した。