それから零に会えたのは二日後だった。
レジにいるあたしに向かって、零がヒョイと顔を覗かせ手を挙げた。
「あぁ〜!」
あたしは驚いて声を上げた。
「12分、乗るよね?」
「うん」
「待ってるね」
「うんっ!」
バイトが終わりに近付くと、あたしはこっそりポーチを持ってトイレへ行く。
そして顔を点検し、グロスを塗り直した。
もうタイムカードを押すまで数分…
9時ジャストに押すと、あたしは元気よく挨拶して店から飛び出した。
キョロキョロして零を探すと、余り人が利用しない方の階段の脇で煙草を吸っていた。
近付いていくあたしにはまだ気付かないようだ。
俯き加減の横顔は、やはりバリアが張られているようで
あたしは歩調を緩めた。
全身黒で固めた服装は、暗がりと同化していて
吐き出される煙と青白い顔の輪郭だけがコントラストされていた。