そうなってしまえば、優紀子とは離婚にまで踏み切らざるを得ないのだ。


 だが、俺にとっては返ってそっちの方がいい選択かもしれなかった。


 優紀子と俺は基本的にそりが合わない。


 互いに反発し合っているうちはそれでもよかったのだが、今や冷戦状態である。


 口も利かなければ、一緒にいる時間も少ない。


 俺は朝から晩まで仕事で、優紀子は昼間家にいて、家事の合間を縫い、好きな本を読んだり、DVDレコーダーで録画していたドラマや映画などを見たりしている。


 健介が香原財閥に来れば、俺たち夫婦は事実上結婚生活にピリオドを打たないといけない。


 優紀子は実家に戻って健介の義理の姉になるだろうし、俺は俺で千奈美と一緒になれる。


 結局はこれが互いに一番いいものになるのかもしれなかった。


 俺はここで一肌脱ぐ気でいる。


 優紀子との、およそ満たされない結婚生活を終わらせるための好機と思えば、そうかもしれなかった。