って乗っ取られたら、戦わなければならないと思っていた。


 龍造は俺にとっても、仮面夫婦の相手役である優紀子にとっても、そして死の病に侵(おか)されながらも香原財閥の将来を考え続けているであろうと思われる洋平にとっても、敵なのだ。


 幸か不幸か分からないが、優紀子はそういった業界の裏事情をまるで知らない。


 どこまで行っても単なるお嬢様なのだった。


 俺はいずれ龍造との争いを避けられないと思っている。


 今は今井商事と大磯グループは業界でも対等だ。


 だが、香原財閥が健介によって継承されれば、業界での勢力図がガラリと変わってしまう。


 一気に大磯グループは業界トップへと躍り出る。


 当初は洋平も与党民生党議員と仲がよくて、おまけに教養に溢れ、毛並みもいい健介なら、きっと香原財閥を盛り立ててくれると思っていたようだが、これが今や疑問符の付くような事態に陥っている。


 仮に現時点で大磯グループが香原財閥を吸収したとすれば、今井商事とはライバルとなってしまい、俺も同業者として戦わないといけない。