BGM代わりにテレビを付けてから、だ。


 俺は朝起きたら、自室で身支度を整え、洗面台で顔を洗う。


 洗顔後、髭を電動ヒゲソリ機で剃り落とし、髪にスタイリング剤を付けて整髪した。


 カバンを持ち、もう一度ネクタイが締まっているのを自室の鏡で確かめてから、逃げるようにして外へと出る。


 優紀子は新聞を読み終わってから、一通り家事を終えると、同じマンションに住むご婦人たちのところに遊びに行っているようだった。


 普段から大人しい家庭の奥様で通っている彼女は、火遊びのようなことには到底手を出さないだろうと思われたし、実際俺が知る限りではそんなことには手を染めていないようだった。


 だが俺はつい最近、リビングのテーブルの上に置きっぱなしになっていた優紀子の手帳を見て、いぶかしむことがあったのだ。


 それは手帳のスケジュールを記入する欄に、18:30とか20:00などの時刻と、単に<M>とだけ書いてあることだった。


“M?……一体何だろう?”


 誰かのイニシャルであることは分かる。