俺は笑いながらも、


「サラリーマンってしがない人種だからね」


 と言った。


 ドライバーが、


「お客さん、おそらく会社の社長さんか何かで、経営と夫婦問題に関して悩んでおられません?」


 と訊いてきた。


「ああ。当たってる」


 俺はそう言い、頷いてみせる。


 タクシー運転手は人をたくさん見てきているから、俺のように仕事に疲れたサラリーマンのことも十分分かるのだ。


「若い女がいるでしょう?セフレで」


「ああ。……セフレっていうより、将来の結婚相手だけどね」


 俺はその点に関しては、きっぱりと断言しておいた。