優紀子のセフレの猪原誠というやつは一体どんな野郎なんだろう……?


 人妻を寝取るやつだから、ろくでもない人間だろうなとは思われた。


 優紀子は普段、暇があれば性愛系のコミックや小説ばかりを読んでいるようだ。


 やはりエロスにどっぷり浸れば、実生活も自然とそうなってしまうのだろう。


 そして俺は優紀子と誠が情交しているのを想像すると、気分が悪くなってしまう。


 街の繁華街でタクシーを一台拾い、目黒の自宅に向けて発進させる。


 俺は疲れた体をシートに凭せ掛けながら、軽く目を閉じようとした。


 不意に運転手が、


「お疲れのようですね」


 と言ってきた。


「ああ。……分かる?」


「ええ。私、あなたのような方をたくさん乗せてきましたから」


「そうなんだ」