彼女から吐き出される吐息が闇空に滲む。



「…風俗?」


今は辞めたけどね、と亜子は付け加え、



「安易に重ねた借金の所為なんだけど。
それ返し終わっても、風俗から抜け出せなかった時、ケイタと知り合ったの。」



お兄ちゃん、と?



「ケイタ、とりあえず俺の実家にいれば良い、って言ってくれて。
それでふたりで金貯めて、ゆくゆくは一緒に暮らそう、って。」


「………」


「あたし、救われたんだよね、ケイタに。
だから舞い上がってて、アンナっちの気持ちとか全然考えてなかった。」


亜子は少し困ったような、悲しそうな顔で頬を掻いた。



「半年間、ごめんなさい。」


そんな馬鹿正直に頭を下げないでほしい。


大好きなお兄ちゃんが愛した女。



「あたし、お金も貯まったし、年明けからアパート借りるつもり。」


「……え?」


「だからアンナっち、もう戻ってきてよ。
ママさんとかパパさん、いつも心配だって言ってたから。」


あたしが一方的に嫌っていた亜子という女は、こんなにも素直に物事を話せる人だったのだと、今になって知った。


だから悔しくなって唇を噛み締める。



「アンナっちがケイタのこと大好きなのも、あたしのことが大嫌いなのもわかってる。
それでも、例え何年掛かっても良いから、認めてくれたらな、って。」


屈託のない笑顔。


それがミツのカノジョの顔とダブる。