こんな顔をしたミツなんて初めて見た。


だから余計に悔しくなって、



「ミツは何も悪くないし、そんな辛そうな顔なんて見てられないよ、あたし。」


壁に背を預け、ビールを流すミツの隣に座り直した。


よく見れば疲弊していて、どれほどそのことを考えて心を痛めていたのかと思うと、避けていた自分が申し訳なくなる。



「もう別れなよ。」


真っ直ぐにその目を見るが、ミツがあたしに視線を合わせることはない。


どうしてそこまであんな女を想うのだろう。


重いため息が混じる。



「わかったよ、もう何も言わないから、今日はとことん飲もう?」


新しいビールを持ってきて、わざわざプルタブまで開けてから差し出してやった。


けれどそれは受け取られることはなく、頼りなく持ち上がった彼の瞳。



「何?」


と、恐る恐る聞いた瞬間。


その瞬間、腕を取られて体が反転し、気付けばミツに押し倒されるような格好になっていた。


手から滑り落ちたビールの缶は転がり、だくだくと黄金色の液体が床に広がる。


背にあるフローリングの冷たさよりもずっと、ミツの瞳が気になった。



「なぁ、お前どうせ男いないんだろ?」


「……え?」


「ならさ、ヤッても問題ないもんな?」