「アンナ?!」


いつもよりずっと早く帰宅した優心は、あたしの姿を見て駆け寄ってきた。


パニックになったように抱き付いて、わんわん泣きながら、あたしは支離滅裂に言葉を並べる。



「…ミツが、あの女と、もう殺してやりたくてっ…」


落ち着けよ、と制されるが、かぶりを振る。


優心はそんなあたしをきつく抱き締めた。


この人は腕はいつも熱い。


だからあたしは散々泣いて、やっと少し落ち着きを取り戻した。


息を吐く。



「どうしてミツは、あんな女が良いんだろうね。
ブスで常識ひとつないくせに愛されてるなんておかしいし、きっと騙されてるんだよ。」


そうやって考えていなければ、何かのタガが外れてしまいそうだったのに、



「なぁ、おかしいのはお前の方じゃねぇの?」


優心はひどく無機質な言葉を発した。



「アンナさぁ、自分が今、どういうこと言ってるかわかってんのかよ。
少なくとも出会った頃のお前は、そんなんじゃなかったろ?」


「はぁ?」


「人を見た目で判断したり、誰かを罵ったり、自分を卑下したり。
俺は少なくとも、そういう女を慰めてやる気にはなれねぇから。」


「………」


「俺はお前の恋心がどこに向いてても、否定なんてしねぇよ?
けどな、どんなに醜い感情を抱いてたって、間違った方向にだけは行くな。」


優心の言葉は正論だ。


だからまた自分が嫌になり、顔を覆う。